インフルエンザの予防接種をして腕が痛い人の話。
人類は快適さを求めて、屋内に潜っていった。
屋内で全てのことができるようにした結果、最も生物からかけ離れた生物になった。
いまやほぼ全ての生産活動が自前の15万ちょっとのPCで全て完結するようになった。
外敵の襲撃が最小限に抑えられた自分だけの空間。快適そのものである。
しかし皮肉なことに、人類はそれにしばしば不安を覚えるようになった。
生物としての健康さを求め、肛門に日光を当てたり、無意味に薄着をして走ったりするようになった。
そしてここで文字を書く一人の男もそうだ。
彼は今日インフルエンザの予防接種を受けに行ったので、腕が痛い。
塾と自宅でのみ生きる生活に言い知れぬ不安を覚えたのである。
彼はとりあえず、外出先でも文字が書ければよかろうと考える。
そのために彼はiPadと専用キーボードを手に入れた。
それを12月にカフェのオープンテラスで開いていると、生き物の進化の奇妙さに妙な面白さを覚える。
生物らしく健康であるとは、一体なんなのだろう。
それにしても腕が痛い。
彼は先端恐怖症なので、針が刺さってしまえば痛みはさほどでもないのだが、刺さるまでが最も恐ろしい時間である。
しかしそれはそれとして、インフルエンザの予防接種後はなんでこんなに腕が痛くなるのか。
なにやら点鼻で済む予防接種が認可されるらしいが、来年はぜひそちらにしたい。
腕が痛くないのならどこにでも受けに行く。
そんな気持ち。