daphがこれまたヤバイ曲を商業でリリースしていた件について。
一般的でない曲を作るのはそう難しいことではない。
一般的でないリファレンスを用意すればいい話だからである。
タモリ俱楽部の音楽回を見れば多くの一般的でない音楽(とそれに使われる謎の民族楽器)を目に(耳に?)することが出来るだろう。
しかし、それを商業で出すとなると話が変わってくる。
商業でリリースされた楽曲は、売れなければならない。
売れるために最も良い手法のひとつは、最大公約数的に作ることである。
流行っている音使い。聞こえの良いコード進行。共感できる歌詞。
ただ、オタクに向けてそういうものを作るのはリスクが高い。
オタクが最も敬遠するものが、「みんなが好きそうなもの」だからである。*1
おのずからして、オタク向けの市場というのは論理破綻しているといえる。
それでも、俺たちオタクに向けてコンテンツを提供してくれる人々はいる。
であるならば、応えなければなるまい。
刺さったものは刺さったと、大声で言わなければ。
何の話してたっけ。
そうでした。
アイドルマスターミリオンライブ シアターデイズ!に、友人であるdaph君の曲がイベント曲としてリリースされた。
それがこちら、「クルリウタ」。
「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」ゲーム内楽曲『クルリウタ』MV
これについての本人のツイートがこちら。
アイドルマスター ミリオンライブ!シアターデイズ、イベント「プラチナスターツアー~クルリウタ~」にて楽曲『クルリウタ』作曲担当させていただきました!くるりよ!何卒宜しくお願いします~! https://t.co/2rnjir7mge
— daph / ゆずりは🌿 (@aa3d) April 19, 2020
あんたがたどこさ みたいな、拍子が安定してないわらべうたとか古謡のモチーフがめっちゃ好きで、そういうのがやりたくてイントロのあれから書き出しました よしなに~です✋
— daph / ゆずりは🌿 (@aa3d) April 19, 2020
そう!音楽といえば4拍子というのが当たり前になっている現代の音楽(≠現代音楽)だが、日本人が万葉集の奈良時代から1300年以上擦り続けているのは、七五調である。
クルリウタにおけるイントロやアウトロに出てkる「えんえんくるり えんくるり」というフレーズがそれにあたる。
七五調というのは、①②③④⑤⑥⑦-①②③④⑤-というリズムで構成される。
つまり、四拍子と三拍子の複合なのである。
この奇数というのがミソで、短歌にしろ詩にしろ、元来黙読するものではない。歌である。声に出して歌うのだ。
であれば、ブレスのタイミングがないと歌い続けられない。
そうしたとき最も心地よく感じるリズムが七であり五なのである。
さらに言えば、上のツイートでも示唆されていた「あんたがたどこさ」は、おおむねこのルールを守りつつも、「肥後さ」「せ(ん)ばさ」など、五よりも少ない三音節のリズムが挟まってくる。
このリズム不定感、「ちゃんとしてなさ」がまさにわらべうたたらしめているのであろうと感じられる。
しかし、それをいかに商業に取り込めるかというのはまた別問題だ。
尖りすぎたものは売れないからである。尖ったポイントと分かりやすさ、そこのバランス感覚がないとプロにはなれないのだろう。
それをdaph氏は、現代でわらべうたの持つもうひとつの側面である、「不気味さ」にフィーチャーし、それを福富雅之氏が怪しげなストリングスの漂うロックに仕上げることで、完成度の高い楽曲に仕上がっているのは見事としか言いようがない。
手毬唄の不気味さについては名探偵コナンなど、度々モチーフに使われるところではあるが、楽曲に大きく取り入れたものとしてはbeatmania IIDXに収録されている「カゴノトリ」が印象深いところであろうか。
Drummania 9th Mix - カゴノトリ "Kagonotori" [EXT]
この楽曲は序盤三拍子・中盤以降四拍子とすることで日本的なリズムを感じさせつつ、「籠鳥耽々」という八音節が途切れることなく歌われるのが非人間らしさ=不気味さを感じさせる。
梶浦由記氏や志方あきこ氏に見られるようなエスニック要素の感じられるシンフォニックロックを踏襲しつつ、更に日本にグッと寄せることで、和の要素が持つ不気味さを取り入れた怪作である。
みなさんも気になったらぜひやってみてください。
全然関係ないけどMM17だからナメてたらフルコンカッターがいやらしすぎる!
そういうところも嫌いじゃないよ。
*1:諸説あります。